2005年09月15日
遠野秋彦の庵小説の洞 total 2160 count

茄子のべき乗

Written By: 遠野秋彦連絡先

 頑固に居座る

 夏の暑さも

 自然の摂理には勝てず

 音を立てて退場していく

 こんなとき

 僕はこれを

 どのように受け止め

 どのように解釈し

 なにをなすべきなのだろうか

 いやまて

 なにを?

 なすべき?

 なにを?

 なすべき?

 なすべきとは

 いったい何だろう

 それは茄子のべき乗

 それは茄子のべき乗

 茄子は数値演算の対象となり

 べき乗演算は完了する

 茄子の二乗は

 2本の茄子

 その二乗は

 4本の茄子

 その二乗は

 16本の茄子

 その二乗は

 256本の茄子

 その二乗は

 65536本の茄子

 べき乗演算可能な茄子は

 驚くべきペースで増え続け

 あらゆる飢餓を解決できる

 そのはずだ

 たぶん

 机上の計算では……

 ふと顔を上げると

 低い空に細い月

 月は笑うよ

 机上の空論だよと

 月は笑うよ

 計算ミスだ

遠野秋彦